創麺屋 中村基さん創麺屋 中村基さん

四百年の伝統、小豆島の素麺作り。四百年の伝統、小豆島の素麺作り。

小豆島素麺のはじまりは約400年前、江戸時代初期と言われています。ある島民がお伊勢参りの帰り、奈良三輪へ立ち寄って素麺作りを見聞しました。旅土産にもたらされたその知恵を、人々は大切に分かち合い、島全体に広めました。
素麺作りは、島の風土に合っていました。あたたかい日がたっぷりと降り注ぐ、穏やかな瀬戸内の気候は、小麦や胡麻を育てるのに適しています。また、塩は、豊かな海から十分にとれます。さらに冬場は雪が少なく、海から吹く風はからっとしています。この風が素麺をしっかりと乾かします。

島の太陽と風が真っ白な素麺を芳しくする。島の太陽と風が真っ白な素麺を芳しくする。

素麺作りはもともと、農家が農閑期におこなっていたようです。 それがやがては家業に発展したのでしょう、いまこの島には大小の素麺製造所が200軒近く。
そのひとつ、手延べ素麺を製造する創麺屋は、緑深い木庄地区にあります。ここは田畑が広がり、小さな小さな鎮守の森や札所が残る、のどかな集落。 「うちは奥まったところにあるから、排ガスの煙を受けずにすむんです」と代表取締役の中村基さんが言います。
真っ白な真っ白な素麺が干し上がると、なんともいえない芳しさが生まれます。これも自然の力、小豆島の太陽と風のおかげです。

つるつる、つるん。その喉越しは熟成にあります。つるつる、つるん。その喉越しは熟成にあります。

素麺の材料は、小麦、塩、ごま油と、じつにシンプル。それだけに、素材や製法のよしあしは、味に正直に反映されます。
創麺屋が目指すのは、喉越しがよく、細いながらもコシが感じられる素麺。この理想に近づけるべく、細やかな工夫を重ねています。たとえば、良質の小麦粉を材料に、じっくりと時間をかけて種を寝かし、熟成させる。麺が乾燥したり麺同士がくっついたりしないよう、表面に胡麻油を塗る。麺がくっつかないよう、箸で丁寧にさばいてから乾燥させる、など。ちなみに胡麻油は、素麺に独特の風味を与えたり、食塩と同様長期保存による変質を防いだり、茹でたときに麺の形をしっかり保って歯切れをよくしたりと、さまざまな役割を果たしているのだそう。こうして、じっくり、ゆっくり作ることで、理想の喉越しが生み出されるのです。

毎日食べても美味しく、嬉しい。そんな素麺を。毎日食べても美味しく、嬉しい。そんな素麺を。

素麺作りを生業とする家に生まれた中村さんは25年前に独立、「創麺屋」を創業しました。
「パスタをはじめ、麺ならなんでも、とことん研究しました。だけど、素麺から離れれば離れるほど、求める味と違う気がしてね。素麺から外れずにいこう、その分、深く掘り下げようと心に決めて今があります」
いまも毎日素麺を食べるという中村さん。
「ゆでたてが一番。さっとゆがいたらすぐに冷水に放って、きゅっとしめる。だしにつけて、つるつるっと。そのたびに『ああ、うちの素麺はうまいなあ』と思います」
こぼればなし その1
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